揺らぐAI覇権の勢力図:Nvidiaが牽引するインフラ特需と、王座を虎視眈々と狙うAlphabet

昔、相場のメンターがよく口にしていた言葉がある。「強い銘柄の押し目(プルバック)は迷わず買え。強いのには必ず理由があるんだ」。彼は、株価の強さを正当化するような好材料はいずれ後からついてくるものだと信じていた。そして今週、コーニング(GLW)に起きた出来事は、まさにこの教えを地で行くものだった。市場に飛び込んできたニュースは、誰の予想をも遥かに超える特大のサプライズだったのだ。

水曜日、AIインフラ関連銘柄であるコーニングの株価が12%もの急騰を見せた。AIチップの絶対王者であるNvidia(NVDA)との間に結ばれた大型契約が発表されたからだ。この契約により、Nvidiaはコーニングに対して最大32億ドルという巨額の投資を行う。コーニングはこの資金を元手に米国内に3つの新工場を建設し、AIインフラの接続需要の急増に対応するため、光工学製品の生産能力を1,000%、光ファイバーの生産能力を50%引き上げる。Nvidiaが自らの需要を満たすため、サプライチェーンの製造能力構築に直接資金を投じているという事実は、現在のAI需要がいかに異常な熱狂の中にあるかを如実に物語っている。

これに伴い、コーニングは長期的な売上ガイダンスも上方修正した。2028年の年間売上高目標を従来の270億ドルから300億ドルへ引き上げ、2030年には400億ドルの大台を見据えている。

株価の動きもまた、極めて示唆に富んでいた。水曜日の終値でコーニングは上場来高値を更新したが、我々はそのわずか1週間前、株価が50日移動平均線まで調整したタイミングで既存のポジションを買い増していた。結果として、この直近の買い玉はたった1週間で約22%の含み益をもたらしている。

振り返れば、4月24日の第1四半期決算発表の直前にもコーニングは高値を付けていた。しかし、売上・利益ともに予想を1%ほど上回った程度の無難な決算に対し、ウォール街の反応は冷ややかだった。投資家は売りを浴びせ、株価は50日移動平均線付近まで下落した。だが、これは強気トレンドの中によくある典型的な押し目であり、チャートは切り上げ型の安値と高値の連続をはっきりと示唆していた。今回の上場来高値更新が過去2年で最大の出来高を伴っていたことを踏まえれば、水曜日の急騰を主導したのは大口の機関投資家だったと見て間違いない。

ここで再びメンターの言葉を借りるなら、「何が機能しているかを見極め、それが機能しなくなるまで使い倒せ。そしてそれを繰り返せ」ということになる。AIインフラは、相場において機能し続けているという意味で、まさに尽きることのない打ち出の小槌だ。依然として強気相場の中で最強のセクターであり、この構図が近い将来崩れるとは考えにくい。いずれチャートが売りのシグナルを点灯させる日は来るだろうが、それはまだ先の話だ。

しかし、市場全体の覇権争いというマクロな視点に立つと、また違った地殻変動の兆しが見えてくる。Nvidiaの支配力は絶対的なものに思えるが、歴史は常に「王座を狙う挑戦者」がどこからともなく現れることを教えてくれる。

ウェブ検索市場を完全に掌握したと過信し、無残にもGoogleにその座を奪われたYahoo。新興企業だったNetflixを侮り、最終的に市場から姿を消したBlockbuster。あるいは2011年、株式市場の主役がメガキャップ・テックへと移行する歴史的な転換点において、Appleに時価総額トップの座を明け渡したExxonMobilが良い例だ。

現在、MicrosoftやAppleをごぼう抜きにして世界で最も価値のある企業へと上り詰めたNvidiaの地位は、盤石だと誰もが信じて疑わないだろう。AIの成長を加速させるためのパートナーシップを次々と結び(コーニングとの提携はその最たる例だ)、何より世界中の企業が彼らのチップを血眼になって求めている。だがここに来て、Alphabetが次期トップの座を奪う最有力候補として急浮上してきている。

Alphabetの快進撃には明確なファンダメンタルズの裏付けがある。まず、9月初旬の独占禁止法訴訟での歴史的勝利により、長年の懸念材料だった規制リスクが払拭され、AIへの全面的な投資環境が整ったこと。これは株価にとって極めて重要な転換点となった。さらに彼らは、AIへの巨額投資を単なる期待値で終わらせず、直近の決算でGoogle Cloudの売上が市場予想を上回るなど、目に見えるビジネスインパクトへと見事に変換している。

加えて、自社製カスタムチップ開発の進展、業界最高クラスの性能を誇るAIチャットボット「Gemini」、そして自動運転分野を牽引するWaymoの存在も見逃せない。もちろん、その基盤にはGoogle検索やYouTubeといった超高利益率の既存ビジネスがどっしりと構えている。

水曜日の引け時点で、Alphabetの時価総額は4兆8000億ドルに達し、Nvidiaの背中を約2400億ドル差まで猛烈な勢いで追い上げている。両者の命運が分かれる兆候を垣間見せたのが、4月30日の値動きだ。この日は、AI分野の要であるGoogle Cloud部門の好調さがアナリストたちを唸らせたAlphabetの驚異的な決算発表直後の取引日だった。S&P500が1%の堅調な伸びを示す中、Alphabet株は10%も急騰し、時価総額の1日あたりの増加額としては史上2番目の規模を記録した。

対照的に、同じ日Nvidiaの株価は5%下落している。これはNvidia自身が何かミスを犯したわけではない(彼らの決算発表は5月20日だ)。AlphabetやMicrosoftといったハイパースケーラーたちが、こぞって「チップの自社開発」に言及したことが原因だ。彼らがAIチップを内製化すれば、当然ながらNvidiaのような既存のハードウェア大手に依存する必要性は薄れていく。たった1日の値動きとはいえ、市場が両者の将来のパワーバランスをどう織り込み始めているかを見事に象徴する出来事だった。

Nvidiaは依然として純粋なAIインフラ銘柄としての色彩が強く、それゆえに企業のAI投資トレンドの変化に対してダイレクトな影響を受けやすい。一方のAlphabetは、AIを広告、検索、クラウドの成長といった実際のビジネス成果に結びつける手腕を証明しつつある。自前のインフラを構築し、カスタムチップによってNvidiaへの依存度を意図的に下げていくその戦略は、極めて強たかだ。

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