東京株式市場では日経平均株価が3営業日続伸し、史上最高値を更新しました。しかし、過熱感から利益確定の動きが警戒されており、8日の取引は調整局面を迎える可能性があります。その背景には、日本銀行(日銀)による異次元の金融緩和からの正常化、すなわち量的引き締め(QT)の加速があります。本稿では、日銀のバランスシート縮小の現状と、株式市場の動向を合わせて解説します。
日銀のバランスシート、縮小ペースが加速
日銀が発表したデータによると、2025年第3四半期(7~9月)の総資産は、前期比で22.3兆円(約1480億ドル)減少し、2024年初頭に量的引き締めが開始されて以来、四半期ベースで最大の減少幅を記録しました。
総資産残高は、ピークであった2024年3月末から61.2兆円(約4070億ドル)、率にして8.1%減少し、695兆円(約4.62兆ドル)となりました。これは2020年末時点の規模にまで戻ったことになります。日銀の資産は主に、日本国債(総資産の約80%)、貸出金(約11%)、上場投資信託(ETF)および不動産投資信託(J-REIT)(約5%)などで構成されています。
国債保有高の削減と今後のETF売却方針
資産の中でも最大の割合を占める国債の保有残高は、第3四半期に10.8兆円(約715億ドル)減少し、567兆円となりました。これは2022年第4四半期以来の低水準です。国債保有高の四半期ごとの減少額を見ると、QTのペースが段階的に加速していることが明確に分かります。
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2025年第3四半期: -10.8兆円
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2025年第2四半期: -8.4兆円
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2025年第1四半期: -6.4兆円
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2024年第4四半期: -3.1兆円
また、満期が来ないETFやJ-REITについては、日銀は市場で直接売却する必要があります。9月の金融政策決定会合で、これらの資産の売却準備を開始すると発表しました。当初の売却ペースは、ETFが年間3300億円(約22億ドル)、J-REITが年間50億円(約3300万ドル)と非常に緩やかですが、将来的にペースが見直される可能性も示唆しています。
なお、2000年代および2009年に購入した銀行株式については、2016年から売却を進めていましたが、2025年第3四半期に全ての売却を完了しました。このプロセスは、今後のETFやJ-REITの売却を進める上での指針となる可能性があります。
東京株式市場の動向と海外要因
一方、7日の東京株式市場で日経平均株価は小幅ながら続伸し、前日比6.12円高(0.01%高)の47,950.88円で取引を終え、3営業日連続で史上最高値を更新しました。この3日間で3,380円以上、率にして7.5%という急ピッチの上昇を見せています。個別銘柄では、日産自動車が3.17%、トヨタ自動車が1.65%上昇した一方で、三菱UFJフィナンシャル・グループは0.97%下落するなど、金融株や自動車株でまちまちの展開となりました。
しかし、米国市場が下落したことを受け、8日の東京市場では利益確定売りが優勢になると見られています。7日のニューヨーク市場では、ダウ工業株30種平均が91.99ドル安、ナスダック総合指数が153.30ポイント安と、主要3指数がそろって下落しました。これまでの相場上昇を受けた利益確定の動きに加え、米政府機関の一部閉鎖が長引き、労働省の雇用統計など重要経済指標の発表が延期されていることへの懸念も市場の重しとなっています。
今後の注目経済指標
本日、日本国内では8月の経常収支や9月の貸出・預金動向、景気ウォッチャー調査などの経済指標が発表される予定です。経常収支の黒字額は3兆5400億円と、7月の2兆6840億円からの拡大が見込まれています。これらの指標が、今後の市場の方向性を占う上で注目されます。