マクドナルドの髪色自由化が示す本当の狙いとは?

Z世代の「自分らしさ」を支える企業姿勢の変化

日本マクドナルドは9月10日、店舗で働くアルバイトスタッフに関する規則「アピアランスポリシー」を改訂し、髪色の自由化を発表しました。この変更は、これまでの保守的なイメージを覆すものであり、単なる人材確保の手段にとどまらず、より深い社会的意義が込められています。

SNSやネット上では概ね好意的な反応が見られた一方で、「ここまでしないと人が集まらないのか」といった疑問も寄せられました。しかし、筆者はこの自由化が、単なる採用戦略ではなく、「若者が自分らしく働ける環境」を整える社会的アプローチの一環だと考えています。

「スマイルあげない」から続く若者支援の姿勢

今回の髪色自由化は、昨年実施されたキャンペーン「スマイルあげない」の流れを汲んでいます。このキャンペーンは、Z世代に向けた採用活動の一環として行われ、タレントのあのさんとコラボしてオリジナル楽曲を制作し、大きな注目を集めました。

同キャンペーンは、世界的な広告賞である「New York Festivals 2024 Advertising Awards」でグランプリを含む5冠を受賞。「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル2024」でも複数の賞に輝きました。

その評価の背景には、「働くときも自分らしくありたい」という若者の気持ちに企業が共感し、長年使われてきた「スマイル0円」というフレーズを時代に合わせてアップデートした姿勢があったのです。

単なる見た目の自由化ではない

大阪の天王寺北口店では、試験的な導入により、採用人数が前年の3倍に増えたという実績も報告されています。しかし、髪色自由化の意義はそれ以上に、「若者が自分を肯定し、前向きに働ける社会の実現」に寄与する点にあります。

類似の社会的取り組みとしては、フランスのルノーが地方在住の失業者に通勤用の車を貸与し、本採用されるまでローンの支払いを猶予する「Cars to Work」プログラムも挙げられます。これも、「雇用にアクセスするための支援」という点で、マクドナルドの姿勢と通じるものがあります。

「自分らしさ」を尊重する社会へ

マクドナルドは、「髪色も自己表現のひとつであり、それを通じてポジティブに働ける職場づくりを目指す」と説明しています。こうした考えは、すでにP&Gのパンテーンが展開している「#HairWeGo」キャンペーンでも見られ、自分らしい髪型での就職活動を後押ししています。

筆者が教員を務める大学でも、今の学生は金髪や青、緑といった多彩な髪色で学業に励んでいます。成績や態度に影響があるわけではなく、個性を表現する手段として髪色を選んでいることがうかがえます。

東京五輪で旗手を務めた江村美咲選手も、その見た目に対する批判に対し「自分の好きな自分でいたい」と語っており、若者にとって外見は単なる装いではなく、自分らしさの一部であることが明らかです。

国際的な視点から見える違い

筆者がヨーロッパを訪れた際には、接客スタッフが個性的な髪型や服装で働いている光景を多く目にしました。アクセサリーを多く身につけたり、椅子に座って接客する様子も一般的で、日本の「均一性」とは対照的です。

マクドナルドの取り組みは、こうした国際的な価値観の変化にも通じるものであり、日本社会全体が「個人の多様性を尊重する時代」へと進んでいることを示しています。

今回の髪色自由化は、Z世代の価値観を尊重し、彼らの「働きたい」を支える企業の姿勢を体現する一歩。それは、単なる企業戦略にとどまらず、より良い社会の実現に向けたメッセージでもあるのです。

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