長年の独自規格に終止符を打った決断
2023年に発売された「iPhone 15」シリーズは、スマートフォン市場に一つの大きな転換点をもたらした。アップルが長年こだわってきた独自の「Lightning」コネクタをとうとう廃止し、より汎用性の高い「USB Type-C(USB-C)」へと舵を切ったからだ。すでにパソコンやAndroid端末で広く普及していた規格への移行は、多くのユーザーに歓迎された。ただ、長年iPhoneを愛用してきた人々にとっては、手持ちのLightningケーブルが使えなくなるというデメリットが生じたのも事実である。では、なぜあのタイミングでアップルは方針転換を決断したのだろうか。
欧州の規制と独自エコシステムの限界
その大きな要因として指摘されているのが、巨大IT企業に対する各国の規制強化、とりわけ欧州連合(EU)による「プラットフォーマー規制」の存在だ。EUは2022年10月、モバイル機器の充電端子にUSB-Cを採用することを義務付ける方針を打ち出した。この標的となったのがまさにアップルであり、同社が展開していた「MFi(Made for iPhone)」プログラムだと言われている。周辺機器メーカーに認証を求め、非認証製品の動作を制限することもあったこの仕組みは、品質保証という名目の一方で、周辺機器メーカーの公正な競争を阻害しているとEU側から判断されたわけだ。2024年末からの規制開始を前に、アップルは欧州加盟国での販売を維持するため、iPhone 15でのUSB-C対応を余儀なくされた。
しかし、単に規制に従っただけとは言い切れない。アップル自身も、Lightning規格の限界をとうに悟っていた節がある。実際、「iPad Pro」は2018年に、最も安価な無印の「iPad」でさえ2022年にはすでにコネクタをUSB-Cへと変更していた。近年のiPadは機能や性能の面で「Mac化」が進み、ビジネスシーンで活用するコンピューターとしての存在感を増している。Mac向けの周辺機器とiPadを接続したいというニーズが高まる中、互換性を重視してUSB-Cに移行するのは必然だった。こうしたエコシステム全体の流れを踏まえれば、仮にEUの規制がなかったとしても、iPhoneのコネクタ変更は時間の問題だったと見るのが自然である。
次なる革新、折りたたみ型iPhoneの影
コネクタの共通化という大きなハードルを越え、アップルのハードウェア開発の焦点は、まったく新しいフォームファクタへと移りつつある。現在、開発の新たな段階に入っていると囁かれているのが、待望の折りたたみ式スマートフォン「iPhone Fold」だ。2026年3月の情報によると、サムスンディスプレイ(Samsung Display)が同デバイス向け画面の生産を拡大する計画を進めているという。
中国のSNS「Weibo」で活動するリーカー、Instant Digital氏の発言がこのスケジュールを裏付けている。同氏によれば、iPhone Foldはすでにフォックスコン(Foxconn)での試験生産段階に入っているとのことだ。具体的には、折りたたみ画面を本体に組み込む組み立てテストが行われている可能性が高い。大きなトラブルが起きなければ、従来通り9月に発表されるであろう「iPhone 18 Pro」と同時期の7月頃には、折りたたみ画面の本格的な量産体制に入ると見られている。
錯綜するリーク情報と今後の展望
もちろん、これらの情報はまだ噂の域を出ない部分もある。Instant Digital氏は過去に、アップルが縦折り型の「iPhone Flip」の開発を中止したと報じたり、2026年2月にはiPhone Foldの全スペックを把握していると主張したりするなど、数々のリークを発信してきた人物だ。一定の実績はあるものの、単一の情報源の主張であれば慎重に受け止める必要があるだろう。
とはいえ、複数のソースから似たような動きが報告されているのも事実だ。例えばFixed Focus Digital氏は、iPhone Foldに3Dプリンターで製造されたヒンジが採用されると指摘している。さらにブルームバーグも最近になって、iPhone FoldはiPhone 18シリーズと同時に発表されるものの、実際の出荷はそれよりも後になる可能性があると報じた。コネクタの汎用化で足場を固めたアップルが、今度はディスプレイという最大のインターフェースでどのような革新を見せるのか。フォックスコンでの量産テストの行方に、世界中の業界関係者が熱い視線を送っている。