ナイキ、自動化推進で数百人を削減へ 脳科学に基づく新フットウェアラインも始動

米スポーツ用品大手ナイキ(Nike)が、サプライチェーンの効率化と製品イノベーションという二つの大きな変革期を迎えている。同社は物流拠点の自動化に伴う大規模な人員削減計画を進める一方で、脳神経科学(ニューロサイエンス)を応用した全く新しいコンセプトのフットウェアを発表した。経営の合理化と次世代技術への投資を同時に加速させる「選択と集中」の動きが鮮明になっている。

物流自動化に伴う人員整理

CNBCなどの報道によると、ナイキはサプライチェーンのさらなる自動化を推進するため、全米で800人近い雇用を削減する計画だ。具体的には約775人の人員削減が見込まれており、その影響は主にテネシー州とミシシッピ州にある同社の物流センターに及ぶという。

この決定について、FOXビジネスの取材に応じたナイキの広報担当者は、「『Win Now(今勝つ)』ための戦略の一環」であると説明した。「業務を強化・簡素化することで、より迅速かつ規律ある事業運営を実現し、アスリートや消費者に貢献する」とし、高度な技術導入と業務統合によって、より柔軟で回復力のあるオペレーション体制を構築する狙いがある。

経営再建と「Win Now」戦略

今回の削減は、同社が長期的な収益成長とEBIT(利払い・税引き前利益)マージンの改善を目指す中で行われる。

ナイキにとって、ここ数年は決して順風満帆ではなかった。中国市場での販売不振や製品ラインナップの再構築に課題を抱え、昨年12月には2四半期連続での粗利益率の低下を報告している。これに対応するため、エリオット・ヒルCEOの指揮下で抜本的な事業再建が進められてきた。

人員削減の波は今回に限ったことではない。同社は2024年2月にも全従業員の約2%にあたる1,600人以上の削減を発表し、同年8月にも本社スタッフの一部削減計画を明らかにしている。一連のコスト構造の見直しは、競争力を取り戻すための痛みを伴う改革と言えるだろう。なお、同社の株価は月曜日の取引を64.99ドルで終え、年初来で2%の上昇を見せている。

脳科学が生んだ新次元のシューズ「Nike Mind」

経営効率化の一方で、ナイキは製品開発においてかつてない領域への投資を実らせつつある。同社内の研究機関「ナイキ・スポーツ・リサーチ・ラボ」に新設されたマインド・サイエンス部門から、初の脳神経科学に基づくフットウェア「Nike Mind 001」および「Mind 002」が発表された。

これまでのスポーツシューズが主に身体的な出力(フィジカル)の向上を目的としていたのに対し、この新ラインはアスリートの「精神状態(メンタル)」に作用することを目指している。競技前後のアスリートがより落ち着き、集中力を高め、地に足がついた感覚を得られるよう設計されているのが特徴だ。

「感覚」を刺激するテクノロジー

10年以上の歳月をかけて開発されたこの「Nike Mind」プラットフォームは、脳と身体のつながりに着目している。

特筆すべきは、靴底に配置された片足22個の独立したフォームノード(突起)だ。これらが柔軟なベースに結合されており、アスリートの動きに合わせて小さなピストンのように反応する。この構造が足裏の感覚受容体を刺激し、意識や注意に関連する脳の領域に働きかけるという。

  • Mind 001: 脱ぎ履きが容易なミュールタイプ。パフォーマンス前後のリラックスや切り替えを想定。

  • Mind 002: 足をしっかりと固定するスニーカータイプ。より強い感覚フィードバックとサポートを提供する。

ナイキによれば、この高められた感覚フィードバックが、外部の雑音を遮断し、自身の身体への再接続を促すという。

「ピーク・ニューロ」トレンドの到来

この動きは、旅行やウェルネス業界で予測されている「ピーク・ニューロ」と呼ばれるトレンドとも合致する。脳の仕組みに逆らうのではなく、その構造に寄り添った製品や体験をデザインしようという動きだ。

ナイキのイノベーション担当クリエイティブ・ディレクター、エリック・アバール氏は、「Nike Mindは、足、身体、そして心を覚醒させる新たな感覚的フットウェアの概念だ。これはパフォーマンスの新しいパラダイムであり、アスリートの未来を向上させる可能性を秘めている」と語る。

開発段階では、マンチェスター・シティFC所属のスター選手、アーリング・ハーランドを含む数百人のアスリートが5年間にわたりテストを行った。ハーランドは「サッカーにおいて集中力はすべてだ。一歩ごとに足の感覚を意識することは、私のプレーにバランスをもたらしてくれる」と、その効果を証言している。

ナイキのチーフ・サイエンス・オフィサーであるマシュー・ナース博士は、今回の発表に際しこう締めくくった。「我々は今、心(マインド)の領域へと拡大している。単に速く走ることだけではない。より『今』に集中し、強靭であること。脳と身体のつながりを利用する新たな道が開かれたのだ」

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