日本のエネルギー安全保障は、米国のドナルド・トランプ大統領が推進する液化天然ガス(LNG)生産の拡大によって強化されると、日本最大のLNG輸入企業であるJERAの幹部が金曜日に述べた。これにより、日本のLNG調達先の多様化も進むと見られる。
米国からのLNG供給増加で安定性向上
日本は中国に次ぐ世界第2位のLNG輸入国だが、昨年のLNG輸入量は前年比0.4%減の6,590万トンとなった。一方で、主要な同盟国である米国からの輸入は増加し、ロシアからの供給はさらに減少した。
今年1月20日に再び大統領に就任したトランプ氏は、バイデン政権が一時凍結していたLNG輸出申請の審査を米国エネルギー省に再開させるよう指示した。この動きについて、JERAの執行役員である前川直大(まえかわ なおひろ)氏は「日本はエネルギー資源を自給できないため、安全保障の観点から、大量の米国産ガスが輸出されることは非常に重要な要素となる」と述べた。
日本政府、アラスカのガスパイプライン支援を検討
ロイター通信は金曜日、日本政府がトランプ氏との関係を強化し、貿易摩擦を回避するため、総額440億ドル規模のアラスカのガスパイプライン建設を支援する可能性があると、事情に詳しい関係者3人の話として報じた。
JERAにとって、米国からのLNG供給が増加することは、供給源の多様化に向けた有力な選択肢となる。JERAは年間3,000万〜3,500万トンのLNGを扱っており、その約半分をアジア太平洋地域(オーストラリア、マレーシア、インドネシア、ロシアを含む)から調達している。前川氏は「米国産LNGは契約面で比較的柔軟であり、調達候補として非常に魅力的だ」と強調した。
LNG貿易は拡大傾向、価格引き下げの可能性も
東京ガス(9531.T)の最高財務責任者(CFO)である南卓(みなみ たく)氏も、「日本の都市ガス供給において、米国産LNGの調達を拡大する可能性は十分にある」との考えを示した。
日本国内のガス消費量は、景気低迷や再生可能エネルギーの普及、原子力発電所の再稼働などの影響で減少傾向にあるが、LNG貿易全体は拡大を続けている。2023年3月までの会計年度におけるLNG取引量は前年比21%増の3,825万トンに達した。
九州電力(9508.T)の幹部である石井時生(いしい ときお)氏は、「米国からのLNG供給が増えれば、価格の引き下げにつながり、日本のLNG調達にとってメリットが大きい」と述べた。
JERAの業績は減速、利益見通しは維持
JERAは東京電力(9501.T)と中部電力(9502.T)の合弁会社であり、国内外で発電事業を展開している。しかし、2023年4月から12月の期間における純利益は1,550億円(約10億ドル)と、前年同期の3,390億円から半減した。JERAの海外発電事業や燃料取引、再生可能エネルギー事業の収益性低下が響いた。特に、台湾沖の洋上風力発電プロジェクト「フォルモサ2」に関連する事業が業績を押し下げた。
ただし、JERAは2024年3月期の通期利益見通しを2,000億円のまま据え置いており、今後の市場動向を注視するとしている。
日本のエネルギー安全保障の強化とLNG市場の変動により、米国とのエネルギー協力は今後も注目されるだろう。