中国の対独輸出が急増、米中関係悪化の影響鮮明に

中国の対外貿易において、ドイツが重要な輸出先として急浮上している。米中間の貿易摩擦が激化する中、中国はアメリカへの輸出を減らす一方で、ドイツへの輸出を2カ月連続で20%以上伸ばしている。これは中国税関総署が発表した5月の統計によって明らかになった。これに対し、ドイツからの輸入は前年同月比で1.3%減少した。

中国全体の5月の輸出は前年同月比で4.8%増加したが、輸入は3.4%減少した。特に東南アジア諸国への輸出も大幅に拡大しており、中国製品の需要が広範囲で高まっていることを示している。

中国国内では、長引くデフレ傾向が経済に影を落としている。5月の消費者物価は前年同月比で0.1%下落し、4カ月連続のマイナスとなった。また、生産者物価は2年半以上にわたり下落が続いており、5月には3.3%の下落幅を記録した。物価の低下は、国際市場における中国製品の価格競争力を高める要因となっている。

5月の対米貿易は、依然として高い関税の影響を受けていた。米中間では100%を超える関税が適用されており、コンテナ輸送の統計からは、一時期30〜60%の輸送量減少も示唆されていた。ただし、ジュネーブでの合意により一部の関税が115ポイント削減されたが、その影響が実際の物流に反映されるには時間がかかっている。

中国・寧波港の梅山ターミナルで業務を統括する容軍傑氏によると、「米国向け輸送は今後、爆発的な回復が見込まれる」としており、企業は関税が再び上昇する前にできるだけ多くの商品を輸出しようと努めているという。なお、関税の一部は90日間の期間限定で緩和されているにすぎない。

希少金属をめぐる交渉がロンドンで開始へ

貿易摩擦は、関税問題だけでなく戦略物資にも波及している。6月10日(月)、ロンドンでは米財務長官スコット・ベセント氏と中国の副首相何立峰氏が会談を行う予定だ。議題の中心は、中国からの希少金属の輸出停滞について。これらの金属は主に高性能マグネットに使用され、欧米の自動車製造など多くの産業にとって不可欠な存在だ。すでに欧州やアメリカでは、生産ラインの停止が発生している。

中国は4月初旬、アメリカの関税に対抗する形で希少金属の輸出規制を強化した。国防分野への転用を理由に挙げているが、ジュネーブ合意後も制限は解除されず、米企業に対してもごく限られた輸出許可しか与えていない。このため、トランプ前大統領は中国が合意に違反していると非難している。

中国政府は、「申請が殺到しており、担当部門の処理能力を超えている」と説明しているが、トランプ氏は習近平国家主席との電話会談後、「米国への希少金属の輸出は再び増加する」と発言した。

欧州産業界では、6月初旬の時点で申請された輸出許可のうち、承認されたのはわずか1桁台の割合に過ぎないと報告されている。欧州商工会議所は先週金曜、「状況は若干改善しているが、供給網の深刻な混乱を防ぐには不十分だ」との見解を示した。

中国商務省は8日、「欧州企業への許可発給を迅速化する方針」と発表したものの、多くの産業界では、中国がこれまで“グローバル供給網の守護者”を自任していたことに対する失望感が広がっている。

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